こんな色合い見たことない!
想像を超えた、生きる宝石200幻冬舎紹介文より
丸山宗利『きらめく甲虫』
昆虫の研究者としてかなり有名な丸山先生の、きらきら綺麗な甲虫に特化した写真集(図鑑)です。
ちょっと数えてはいないのですが、帯によるとこの本には『甲虫』のうち特に美しい光沢を持つものが200種収められているそうです。丸山先生の個人的な好みも加味されて、とあるので、どれがそうなのかなあと想像するのもひとつの見方かもしれません。
コガネムシ、オサムシ、タマムシ、ゾウムシ、カミキリムシが扱われています。「甲虫って何?」「きらめく理由」「きらめく仕組み」「きらめく擬態」「きらめく甲虫とヒト」というコラム、「玉虫裏カタログ」と学名索引もついています。
章の始まりには、虫に詳しくない読者(私)にもわかりやすく、しかも興味を惹かれるような文章が書かれていて、その虫への関心が掻き立てられます。
特にタマムシの章に書かれていたことが面白かったです。タマムシが美術品にも多く使われているということは驚きでした。法隆寺の玉虫厨子って、ただ玉虫色の細工がされているのかなとなんとなく思っていたのですが、タマムシの前翅そのものを使っていた、なんて。資料集などで見ていたはずなのに、はじめて知りました。また、ベルギーのシャンデリアにも興味が湧いて、実際に見てみたいなあと思いました。(写真だけでしたらオランダ政府観光局とベルギー・フランダース政府観光局が作っているウェブサイトhttps://www.hollandflanders.jp/で見ることができます。検索窓に『ブリュッセルの王宮』と入れると出てくる記事の下の写真です。)
それと、節にはサブタイトルみたいなものがついているのですが、それが味わい深くて、虫への愛情を感じられていいなと思いました。例えば「ホウセキゾウムシ(宝石象虫) 岩絵の具の色合い」「アオカミキリ(青天牛) 花にさす光線」「ネクイハムシ(根喰葉虫) 湿原に光る朝露」という感じ。。
全体的には文章はかなり少なく、虫たちの写真をたっぷり楽しむことができます。レイアウトもとてもいいなと思いました。横に一列、縦に一列だったりもありますが、一匹だけ拡大されてたり大胆に一部分だけカットしたり。羽を広げて飛び立とうとするような躍動感もあったり、実物大の小さな姿があったり。それにところどころには、まるでファッション雑誌みたいな手書き風アオリが添えてあったりもして、その虫の見所がカジュアルにわかりやすくて、どんどん楽しく見られます。
ニジダイコクコガネのページが面白いなと思いました。みんな同じポーズして、でもちょっとずつ色も頭のツノもちがう。仮面ライダーのカタログを見ているような気持ち…。
ゾウムシ全体も楽しかったです。ゾウムシはとにかく脚のフォルムがすごい。繊細なイヤリングみたいです。そして模様の特徴を『〜紋』としてまとめてあって、すごく意匠のヒントになりそうで、見応えありでした。
ネクイハムシの色についてのキャプションも素敵です。新しい虫の愛で方を教わった気がします。
この本に載っている甲虫は、どれもこれも、アバンギャルドだったり、枯淡といえるようなものだったり、人間には絶対に思いつけないようなデザインばかりで、新鮮で楽しい気分にさせてくれます。圧倒されて、生き物ってすごいな…となんだか深淵に触れたような心地になるけれど。添えられているフレンドリーな文章が、それはけして自分から遠くにいる物体などではなく、身近に感じるべき可愛らしい生き物なんだと、改めて気づかせてくれるような気がしました。
この本を見た後では、甲虫、あるいは昆虫のことをきっと好きになると思います。最後のコラム「きらめく甲虫とヒト」で先生は虫たちの生きる環境のことを教えてくれますが、そういったこともまた改めて考えるきっかけになりました。熱帯のジャングルもそうだけど、身近な環境だって壊れてしまった部分がある。なにかできることはないかな、とまた強く思いました。
索引のページにありますが、これら標本の写真は『深度合成法』で撮影されたそうです。野外で見たときのような色合いと光沢になるように、種ごとに光を調節したそうです。だからこんなにクリアだけど自然に、美しい色で見ることができるんですね。ほんとうに綺麗だと思いました。
ちなみに、私が一番気に入った甲虫はキンギンコガネでした。高貴な色合いところんとしたフォルムがかわいいです。コスタリカの虫だそうです。
実は最近までリアルな昆虫はにがてで、見るとゾッとするくらいでした。絵画や絵本にみる昆虫は好きで集めたり鑑賞に行ったりしたのですが、写真や実物の昆虫はどうにも…。でも香川照之さんのカマキリ先生に虫の魅力を教わるうちに、だんだん、リアルな昆虫もだいじょうぶになってきました。まだ触るのは無理ですけど、好きと言ってもいいと思います。
今年になって丸山先生の著書をいくつか読ませていただいて、自分が知っているよりもずっとたくさんの『昆虫』が世界に生きているんだということをいまさら知って、とても新鮮な気分になりました。先生の生活が楽しそうなことにもワクワクして、新しい遊びを見つけたような気分でした。
この本は、そんなときにTwitterで見かけたものです。
とても美しい表紙。特に最近青色が好きなので、下の二匹にとても心惹かれました。でも改めて全体を見て見ると、それぞれすごく個性的な色と形をしていて、でも配置のバランスが良くて、しかもこれは全部『甲虫』というものらしい。
とても興味を惹かれたので、すぐに購入しましたが、買ってよかったとつくづく思います。…とはいえ、種類によってはページに手を当てるのもちょっとむずかしく感じているので、まだまだ虫の道は険しいのです。。
大好きな絵本「くものすおやぶん とりものちょう」
ちいさい頃は、野原で兄とバッタを捕まえるのが好きでした。帽子でさっとすくって、ほにゃっとした体の脇に指を添えて持ち上げる。そして放して飛ばす。それだけの遊びで、つかまえて飼ったりはしないのですが、けっこう頻繁にしていた気がします。また、兄が地蜘蛛をとったのを見せてもらうのも好きでした。灰色の柔らかな袋に入っていて、尖った石でそれを切り開き、中の地蜘蛛を出して見る、ただそれだけ。今から考えると、バッタたちや地蜘蛛たちにとっては迷惑な遊びですね…。
でも小学校の3年生のころ、理科の学習帳の表紙になっていたチョウの口を見て、虫が突然強烈に苦手になりました。長く伸びた口が花の蜜を吸っているのですが、なんだかとてもこわくて気持ち悪く思えたのです。その後は虫を避けて生きる日々でした。
しかし大人になると、思いがけず仕事の上で避けて通れない場合もありました。バイト先の風除室に、毎朝おびただしい量のトノサマバッタがいたのです。彼らはその中で暴れまわり、羽音とガラスにぶつかる音とが激しく鳴り響いています。そこに入っていきドアを開け掃除しなければならないことは、考えるだけで怖気立つ作業で、私はそのことでますます虫がにがてになっていきました。
しかし虫が苦手でゾッとしてはいても、絵本や絵画に出てくる昆虫は好きで、集めてさえいました。特に好きなのは『くものすおやぶん とりものちょう』という月刊誌のタイプの絵本です。
作者の秋山あゆ子先生は蜘蛛が特にお好きらしく、Twitterでも愛らしいハエトリグモの画像をリツイートしてくださったりして、上に書いたように虫の道の入り口はカマキリ先生が開いてくれましたが、そのもっと前に小さな蜘蛛の可愛さで虫に対する怯えを払ってくれたのは、秋山先生だったのだと思います。
この絵本は福音館の月刊誌ですが、その後絵本として刊行されたようです。続編も出てます。雑誌で書いそびれたので手に入れたい。。
コメント